【1bit】シャープのミニコンポを単体1ビットΔΣデジタルアンプに改造する【その5】
【ケースに実装する】
組み立て中。この後悲劇が(笑)。
一通り完成しましたのでケースに組み込みます。
アンプモジュールは元々コンポに付いていたときには縦に実装されていたので、それ用の取り付け金具もあり楽なのですが、それだと高さのあるケースを用意しなくてはいけません。けど高さのあるケースって高いんですよね。アンプとしての見栄えもどうかなと思うし。なので今回は市販のL型アングルの小さいのを加工して横に取り付けることにしました。
使用したのは今回もタカチ電機工業のアルミサッシケース、SLシリーズです。
100V周りは特に怖いのでしっかりハンダ付け&熱収縮チューブでガードです。
どんどん取り付けていきます。
いよいよ組み立て完了して、配線を何度も確認して、いよいよスイッチオン!。…音が鳴らない?。
すぐに「パチッ!パチッ」という音と共にアンプモジュールから盛大な煙が…。やっちまった!!慌ててテーブルタップの電源を切りました。
でもなんで?。原因はこれ↓でした。
2つが連結したタイプの陸軍ターミナル。カッコイイので今回初めて使ってみたのですが…。
これ、ケースの穴開け加工後に付属の絶縁ワッシャーで挟んで取り付けるタイプのものなのですが、初めて使う私のケースの加工の仕方が悪くて端子がケースに触れてGNDに落ちた状態になっていたんです。BTLアンプにとってこれは御法度。あえなくパワートランジスタ付近から煙を吐いてお亡くなりになりました。
ちょっとした加工ミスが命取りです。怖いですね。
すぐさま予備機として確保していたもう一台のSD-CX8をバラしてコネクタを付け替え準備。
気を取り直して再度組み込み。今度は昔からあるプラスチックで両側から完全に挟むタイプの陸軍ターミナルを手持ちで持っていたのでそれを使いました。
アンプモジュールはパソコンパーツ屋さんで売っている放熱テープを放熱板に貼り付け、ケースの底板にくっつけて放熱するように取り付けました。
上の写真のように組み込んで再度配線を確認して電源オン。見事綺麗な音で鳴り始めました。完成~!
フロントビューです。ボリュームつまみはバランス的にもう少し大きいのにしたいのですが、アルミの大きいツマミってあまり売ってない上にあっても2~3,000円と高いんですよね。
シャープの1ビットアンプシリーズの象徴、青く輝くΔΣのロゴマークもSD-CX8から切取って再現しました(切り口の仕上げが汚いのは勘弁して下さい。こういう加工はあまり得意では無いんです)。開発メーカーに敬意を表してシャープのロゴマークも装備…あれっ(^^;。
しかし最近は輝度の低い青色LEDあんまり売って無くて適当なの買ったら眩しい眩しい(笑)。もうちょっと輝度の低いヤツか、オリジナルの機体から外して取り替えようと思います。
もう一つの1ピットロゴもちゃんと移植。
リアビューは毎度おなじみACインレット仕様にしてすっきりしました。陸軍ターミナルが若干ズレてるのはご愛敬ということで(笑)。しかし位置決めしてちゃんとセンターポンチ打ってから穴開けてるのになんでズレるかなぁ?←単にヘタクソ。
今後考えてる事として、このアンプモジュールの中の電解コンデンサーがちょっと気になりまして…。次回はこれもオーディオ用に取り替えてみようかなと。SD-CX8は2003年のモデルでもう12年経ってますから取り替えておくのもいいかなと思っています。
と言う訳で無事完成です!。電源を強化したこと、プリアンプの変更などでSD-CX8実機よりさらに締まってメリハリのある音になりました。昨今のデジタルアンプ群と比べても全く引けを取りません。というよりこの独特の個性ある音は他に代わるデジタルアンプが無いです。確かに低音はズンズン出るタイプではありませんから、いわゆるドンシャリ音が好きな方とかそういうジャンルの音楽には全く合わないですけど、そうでなければこれだけ良い音のアンプはそう無いと思います。
やっと長年構想していたシャープの1ビットΔΣデジタルアンプの単体化構想が実現しました。いつか「N MODE」の1ピットアンプを手に入れることが出来る日まで大切に使っていこうと思います。
これにて「高速化事業部」さんとのコラボ企画、「シャープのミニコンポを単体1ビットΔΣデジタルアンプに改造する」。「がらくた文書工房」版、完成です。長い記事でしたが読んでいただいた方、ありがとうございました。
さて、「高速化事業部」さんは一体どんなアンプ仕上げてくるんでしょうか?。管理人のりょうさん、お待ちしてますよ!。
【1bit】シャープのミニコンポを単体1ビットΔΣデジタルアンプに改造する【その4】
【ミューティング回路の製作】
先達の方々のお知恵ばかり拝借しておりますが、1ビットアンプモジュールは電源ON・OFF時にかなりのポップノイズが出るそうです。
なのでミューティング回路を作ります。
ここで大切な注意点があります。それは…
【このアンプモジュールはBTLアンプです】
ということです。
なので普通のアンプの様にスピーカーのマイナス端子を共通化したり、ましてやGNDに落とすなどしてはいけません。
この点をうっかり見落として、あわや私はドツボにハマりかけました。…てかちゃんと真剣にオリジナルの回路追っていればすぐわかることなんですが(^^;。
まあ、デジタルアンプって殆どがBTL接続ですけどね。
回路図は以下の通りです。(クリックで拡大します)
タイマーIC555を使ったミューティング回路です。回路図の上に元回路と書いてあるのはオリジナルの回路では0.22µFを直列に入れた後に1Wの酸化金属抵抗が入っているのですが、特に意味は無いようなので実際に作るときには0.1µF1個に置き換えました、という意味です。回路図上はオリジナルの回路と同じにしてあります。実際問題ありませんでした。
ちなみにオリジナル↓
電源OFF後、瞬時に切れないといけないのでトランス直後からAC12Vを貰ってきて最低限の平滑をして電源としています。リレーは回路図上ではC接点になってますが、単純なON・OFFで良いので私は音響用でミューティング用には定評があるパナソニックのALA2F12(2回路a接点)を左右独立の2個で使いました。(以前音の出ないオンキョーのミニコンポを修理したときに買ったものが手持ちとしてあったってだけなんですが)。
以上でシャープのミニコンポ改造1ビットΔΣ単体デジタルアンプの完成です。
さっそくテストしてみます。いつものごとく板に木ネジで止めて仮配線をしてドキドキの電源ON。
やった~!無事音が出ました!。まさにいつもの1ビットアンプの澄んだ音です。アンプゲインも申し分なし。ミューティング回路もちゃんと仕事してます。いやぁ、いい音だぁ、大満足!。テストなのでぶっ飛んでも良いジャンクのスピーカーに繋ぎましたが、思わず聴き惚れてしまって早く本チャンのスピーカーに繋ぎたい衝動に駆られることしきり。
そのまましばらく動作させましたが、心配した7806の発熱も問題なし。一番発熱するのはやはりアンプモジュールで、小音量でも付けられてる放熱板(写真でアンプモジュールの上に付いているもの。パソコンのCPUクーラーと同じように放熱グリスを塗りたくって取り付けられているのでこの部品を外して使ってはダメです。)は結構熱くなりますので、ケース実装の際はこのあたりの放熱に気をつける必要があります。
思わず祝杯!ということでハイオク1本!。つまみはこの間サントリーの阿蘇熊本工場へ行ったときに買ってきた工場限定おつまみ(美味い!)と山口県民にはおなじみ、プリプリした歯ごたえが特徴の宇部かまぼこのちくわです。長年の念願が叶って単体アンプ化成功!嬉しすぎます。
次回、ケース実装を行って1ビットアンプ単体化完成!としたいと思います。
…が、ここで私はやらかしてしまうんですね。詳しくは次回に。ではまた。
【1bit】シャープのミニコンポを単体1ビットΔΣデジタルアンプに改造する【その3】
【プリアンプ部の製作】
次はプリアンプ部を作ります。
SD-CX8のパワーアンプモジュールはゲインが低いため音声信号をそのまま入力してもある程度大きな音で聴くには十分な音量が得られないというのが先達の方々の情報でわかっています。
1ビットのストレートな音を聴きたい、と言う場合はプリアンプ無しで組むのが良いかと思いますが、アンプとしての実用的にはやはりプリアンプが必要だと考えました。オリジナルのSD-CX8もNJM4558を使ったオペアンプを通しています。
今回はオペアンプを使った簡素なプリアンプを前段に入れることにしました。メンテナンス性の事も考えて入出力をコネクタにしておいて直結すればプリアンプをパスすることも出来るので問題は無いかと思います。
回路図は以下の通りです。(クリックで拡大します)
NJM4580DDを使った特に特別な事はしてないプリアンプですので、他の±12Vで動く2回路のプリアンプをいろいろ取り替えて好みの音にしていただければ良いでしょう。ゲインはオペアンプの帰還抵抗値で調整してください。電解コンデンサーは無極性のニチコンMUSE ESを使ってますが、これは単なる好みです。
次回はミューティング回路を作ります。
【1bit】シャープのミニコンポを単体1ビットΔΣデジタルアンプに改造する【その2】
【第2回 電源部の製作】
前回の続きです。
今回は電源部を作ります。
その前に今回製作するアンプのイメージとしてブロック図を書いてみました。(クリックで拡大します)
1ビットアンプのストレートな音を楽しみたければプリアンプを通さず直接入力信号を入れても良いのですが、先達の方々の製作結果からこの1ビットアンプモジュールのゲインが低めであると言う事が判っているので、実用的な観点から今回は入力にオペアンプを用いたプリアンプを介す事としました。なのでプリアンプ用の電源も必要となります。プリアンプは使わないという方は必要ありません。
また、スイッチON・OFF時のポップノイズもかなり大きめであると言う事で出力のリレーミューティングも必要と言う事で入れております。
今回必要な電源は以下の8系統です(実機の回路や測定結果及び先達の方々の情報を元にしています)
まず、アンプ駆動に必要な電源として
①+16.8V(アンプ駆動用・裸電源)
②-16.8V(アンプ駆動用及びダイナミックフィードバック回路用・裸電源)
③-9.5V(ドライバー電源・レギュレーテッド)
④+5V(アナログ回路用・レギュレーテッド)
⑤+5V(デジタル回路用・レギュレーテッド)
またプリアンプ用として
⑥+12V(オペアンプ駆動用・レギュレーテッド)
⑦-12V(オペアンプ駆動用・レギュレーテッド)
最後にリレーミューティング回路用として
⑧AC12V(ブリッジダイオードでの整流前に分岐)
以上、結構な系統の電源を用意しなければなりません。
ミューティング回路は電源オンと同時に働き、電源OFFで瞬時に切れなくてはなりませんので、整流前のAC12Vの状態を電源として使います。
以上を元に今回作成した電源の回路図が以下になります。(クリックで拡大します)
多分読んでおられる方の大半が知りたかったのがSD-CX8のアンプモジュールのコネクタのピンアサインだと思います。上図の通りになります。赤以外の線は同じ色が使ってありますのでコネクタを付け替える場合は間違えないように十分な注意をお願いします。
アンプモジュールのピンアサイン以外は特に凝ったことはしていないごく普通の裸電源及びリニア電源です。
AC12Vを整流・平滑した後の電圧はちょうど±16.8V近辺になりますのでそのままアンプ用電源として使えます。
-9.5Vを作るのに普通は負電源用の7910あたりを使うのですが正電源用の7806をちょっと変則的な使い方をして作っています。これは実機の回路そのままです。なかなか頭のいい使い方だなと思っていい勉強になりました。
A/D RESETには本来ロジック回路からのリセット信号が入るのですが、単体でアンプモジュールを動かすので、電源立ち上がり後に一度リセットが掛かれば良いということで特にリセットIC等使わずにCRによる遅延回路による入力としています。
使用した部品は以下の通りです。ELNAの12000µFなど手持ちの部品を結構使って少しでも安く上げてます(笑)
12V2A2回路のトランスは自作ではおなじみ、秋葉原・東栄変成器の「J122W」を使いました(東京に行ったついでに買ったので重たいのを頑張って持って帰ってきた(^^;)
あとはそれぞれお好きなようにアレンジして貰えれば良いかと思います。
組み立て完了。今回は貧乏な紙フェノールではなく、ちゃんと片面ガラスエポキシを使いました(余分な部分は後で切った)。7806周りがスカスカですが、これは-9.5Vラインでどのくらいレギュレーターで損失が出るのかわからなかったので結果によっては最悪大きいヒートシンクに付け替えられるようにと言う事でこうしています。(結果的にはほんのり暖かくなる程度の発熱量しか無く、このヒートシンクで十分でした。)
板の上に仮組みしてトランス・ヒューズ・ブレーカーを繋いで規定の電圧が出ているかどうか確認。(電源基板の単独テストの写真を撮り忘れていたのでこの写真は完成後の最終テストの時のものです。まあこんな感じで結線してテストしたというイメージということで。)
-9.5Vは実測で-10.3V位出ていたのですが先に結果を申し上げるとこの程度なら許容範囲でした。
次回はプリアンプ部を作ります。
【1bit】シャープのミニコンポを単体1ビットΔΣデジタルアンプに改造する【その1】
しばらくまたこのテーマで連載みたいなことをやってみようと思いますが、今回の記事を掲載するにあたりお断りを。
①当記事は改造行為を推奨するものではありません。情報は開示致しますので腕に覚えのある方がやってみられるのは止めませんが、
その結果感電して死のうが家が全焼しようが全て自己責任と言う事でお願いします。当方では一切の責任は負いかねます。
②電子工作の経験の無い方、経験の浅い方、電気知識の無い方、自己責任の意味がわからない方は決してやらないでください。
これについても当方では一切の責任は負いかねます。
以上、くれぐれもよろしくお願い致します。
突然ですが、1999年頃から2006年頃までシャープが盛んに出していた「1ビットデジタルオーディオ」をご存じですか?
↓こんなマークの付いていたミニコンポやCDラジカセやMDプレーヤー達。
このΔΣ(デルタシグマ)のマーク、覚えている人も多いと思います。
売り場で見かけた事があってもメーカーがシャープというだけで敬遠した人も多いかと思います。
当時のイメージ的には「え~っ、ケンウッドとかDENONとかONKYOとかならわかるけど、シャープのコンポなんてあり得なぁい~」って感じでしょうか。
でも70年代頃はシャープも「OPTONICA」(オプトニカ)ってオーディオブランドで積極的にオーディオ製品を展開していたんですよ。
1998年のオーディオエキスポの会場でシャープは突然、1台のアンプの試作機を参考出品します。
そして翌年、世界初の1ビットデジタルアンプを受注生産の形で商品化に成功します。
SM-SX100。お値段はジャスト100万円!。値段からしてハイエンドオーディオ機ですね。
デジタルアンプの動作原理をざっと説明すると、音声信号を超高速でサンプリング(要はブツ切り)してデジタル信号の変化に置き換えて増幅します。
「1ビット」と言うのは通常の「クラスD方式」と呼ばれるデジタルアンプがサンプリングのスイッチング信号に「PWM信号」を用いるのに対して、純粋な「ON・OFF」しかない「1ビット信号」を用いていることからそう呼ばれています。
また、シャープのこの方式は高速サンプリングにΔΣ変調を用いていることから「ΔΣ」が名前に冠されています。
説明がざっと過ぎたのでアレですが、興味のある方はシャープの発表した技術資料や論文が公開されてますので読んでみて下さい。なかなか面白いです。
1ビットオーディオ www.sharp.co.jp/corporate/rd/journal-77/pdf/77-14.pdf
1ビットオーディオアンプ用ΔΣ変調器 www.sharp.co.jp/corporate/rd/26/pdf/91_03.pdf
Digital (1bit) Audio Technology home.jeita.or.jp/is/jeitakouza/kyouzai/toukoudai/05.pdf
そして、さほど時を置かずに量産化&コストダウンに成功し、我々にも手に入りやすいミニコンポ等のゼネラルオーディオ機にこの1ビットΔΣデジタルアンプが搭載され発売されました。
細かい理屈はさておいて、当時、シャープが出したオーディオとの偏見を持たずに聴いてみられた方は一様に驚かれたと思います。
今までのアンプには無かった圧倒的な解像度と明瞭感、ハイスピードでクリアな澄んだ音。
2015年の今でこそいろんなデジタルアンプがあり、音質も甲乙付けがたいですが、2000年頃のあの時代に於いてはまさに驚愕の音質でした。
しかしながら、残念な事に2006年発売のSD-FX33を最後にシャープは1ビットΔΣデジタルアンプというよりオーディオそのものから事実上撤退してしまいます。
当時シャープで1ビットアンプに携わり、定年退職された方が「Lyric」という会社を立ち上げ「N mode」というブランドで1ビットアンプを出しており、1ビットの火は消えておりませんが、いかんせんシャープとは企業規模が違いますから我々にも手に入りやすい安価なゼネラルオーディオではなくピュアオーディオ機としての展開であるために私なんかには手が届きません。
一度体験したら他には無い音に魅入られて今でも愛用されて居る方も多いと思います。シャープと言う事もあってかミニコンポやMDプレーヤーは実売価格も安かったですし。
しかし、壊れないように大切に扱ってもそこは機械、CDやMDが読めなくなったり、電源が入らなくなったりと故障に見舞われ、すでにシャープでも殆どの機種が修理対応を終えていることも有り、2015年の今、使い続けることが難しくなってきています。(それでも修理可能であればちゃんとしたメーカー修理をお勧めします。)
オークションではとりあえず不具合の無い機体はそれなりの値段で取引されています。しかしそれらもいつまで持つかはわかりません。
電源さえ入る機体であれば、外部入力にCD等を繋いでアンプとして使う事は出来ます。でもシャープのミニコンポによくある故障が電源の不調で電源が壊れるとアウトです。
私自身もデジタルアンプの特徴であるハイスピード、高解像度でありながらどこかアナログ的な艶っぽさを持ったこの1ビットΔΣデジタルアンプの音に魅入られた一人です。
いつしかアンプとしての延命を考えるようになりました。しかも出来ればアンプ部だけを使って単体のオーディオアンプとして作り替えられないかと…。無論、メーカーとしては絶対に推奨しない改造行為ではあるのですが…。
ジャンクで手に入れてきたミニコンポ「SD-CX8」です。CD再生不可、MD再生不可、ラジオOK。なのでアンプ部は生きています。この他によくある故障としてはCDのフタが突然開いたり閉まったりするとか、電源が入って1秒で落ちる、等があります。
ここから先はメーカーさんは禁止してる行為ですのでそのつもりでお願いします。
とりあえずバラして回路を追ってみます。また各所の電圧等を調べていきます。
電源部にはこのクラスのミニコンポとしては大きめのトランスが付いています。電源系統は結構いくつも種類が必要です。
取り出した心臓部、パワーアンプモジュールです。今回の改造に必要なものはこれだけです。
パワーアンプモジュールの中を見てみるとA/D変換を含めデジタルアンプとして動作するために必要な部分は全て組み込まれています。つまり、電源と必要な周辺回路を用意すれば単体アンプとして動作させることは可能です。
今回の「SD-CX8」はサンプリング周波数が2.8MHzの機種です。「IX0498AW」というチップが使われています。シャープの1ビット機は後期になるとサンプリング周波数が倍の5.6MHzになり、理論上はサンプリング周波数が高いほど高音質になるのですが、どうも5.6MHz機は音に色づけがしてあるのか、2.8MHz機を好む人も多いようです。私自身も5.6MHz機(SD-GX1)も持っているのですが2.8MHz機の音の方がなんとなくですが好きです。
パワーアンプモジュールを一旦戻して各部電圧測定です。老眼に鞭打って基板上の回路も追いかけます。
実はシャープのミニコンポに使われているパワーアンプモジュールはモデルによって造りが違います。実際私も「SDーGX1」をバラしてみたらかなり細部やコネクタ仕様が違っておりました。今回は「SD-CX8」のパワーアンプモジュールを使用して単体アンプ化を行います。
ネット上ではすでに単体アンプ化を成功させている方もいらっしゃいますが、遅ればせながら私も挑戦してみようと思います。
それと実は今回の記事は前回DAC製作でもお世話になりましたネット上では10年来のお付き合い、「高速化事業部」さんとの本格的コラボ企画です。
「高速化事業部」の管理人であるりょうさんとメールでやり取りしていたときに、「世の中ハイレゾがブームになってきてるし、今あえてシャープの1ビットアンプを弄ってみるのも面白いよね」という話になり、そこから今回の企画が生まれました。
趣向としては私の「がらくた文書工房」ではオーソドックスかつ正攻法での単体アンプ化を、「高速化事業部」さんでは魔改造的なハイチューン仕様での単体アンプ化を行い、それぞれのサイトで成果を発表、という形になります。
と言う訳でそれぞれでどんなものが出来るのか?両サイトでの記事をお楽しみいただけたらと思います。
それでは次回、電源部を製作してみたいと思います。ではまた。
マルツのヘッドホンアンプキットと電源を作ってみた。
私自身はもともと住む家への拘りというものがそんなにありません。
多少ボロくてもそこそこ周辺が便利で、雨風しのげてそこそこ快適に過ごせて寝れればもうそれで十分、って感じです。
そんな訳で今住んでるところは安普請な集合住宅なので、隣近所への音漏れはそれなりにあります。
ご立派な「リスニングルーム」なんてありません。
なのでスピーカーでそんなに大きな音を出して聴くことは出来ません。
一応隣近所の方には理解を得てますけど、マイルールとしてスピーカーを使うのは朝8時から夜9時までと決めています。
それ以外の時間はヘッドホンリスニングです。
ヘッドホンはまあそこそこの物を持っていますが、アンプやDACのヘッドホン端子に繋いで聴いていましたので音質的にはあまり良い物ではありませんでした。あくまで深夜のお気軽リスニングが出来ればいいやって感じで。
何度か手頃なヘッドホンアンプを買おうと探した事がありました。ところが今はヘッドホンアンプがちょっとしたブームなんですけれど、引き合いの多くはポータブル機器での使用であるため、電池駆動のポータブルヘッドホンアンプや据え置き型でもUSB-DACと一体化したモノがほとんどなんですね。私が求めてるヘッドホンアンプ単体の据え置きとなると、もうオーディオ業界お得意のバカみたいに高額なものか、音質はそれなりでただ音量を上げるだけの安いヤツしか無いという状態です。
「無いものは作ってしまえ」はX68000ユーザーの合い言葉ですが、幸い電子工作キットで何社かから出ていましたのでこれを作ってみることにしました。
共立電子のTPA6120A2を使ったバランス入力のヤツとかマルツパーツのフルディスクリート構成のヤツとかにも惹かれたのですが、まずはお手頃で音質の良いモノを一つ作りたいと言う事でマルツパーツの「LHPA-DIA BUFFER-KIT」(3,315円)を買ってみました。
オペアンプ+ダイヤモンドバッファの回路構成に電源部がカレントミラーで正負電源を用意しなくて良いお手軽さも魅力でした。安いし。
まあ「オペアンプなんて安い真空管アンプよりノイズまみれなもの選ぶとかアホか、フルディスクリートこそ至高」とかうるさい事言う人に絡まれそうですがほっといて下さい。
周辺パーツと一緒に頼むと程なく到着しました。しかし電子パーツ屋さんはどこも在庫さえあれば出荷処理が早くてありがたいです。
特に難しい所も無いので(初心者には難関と言える米粒より小さいチップコンデンサーのハンダ付けが基板の裏に2カ所あります。)さくっと組み上がり。取り付けや部品の極性チェックをして電源繋いで音出し。ちょっとびっくりしたのは安いキットにも関わらず出てくる音はなかなか綺麗な音です。
てかこのキット、基本回路はnabe氏のサイト「nabeの雑記帳」に載ってる回路ほぼそのままのような気もしますが…(^^;。でも専用基板でキット化されてるのはいちいち部品集めたりしなくて済むのでお手軽でありがたいです。部品も変なモノは使われていませんし、音声信号の通る部分はそれなりのちゃんとしたパーツが使われています。オペアンプ自体もLME49720だし。音的には変なメーカーの2万円くらいのヘボい据え置き型ヘッドホンアンプには勝ってると思います。電源もカレントミラーの仮想グラウンドで+電源だけ用意すれば良いのでお気軽です。
組み立て後、いつもの100均ケースに入れて4日間エージングがてら連続使用していて十分満足していたのですが、問題が発生しました。
4日目にいきなり出音がノイズの嵐になりました。明らかにおかしいのでケースから出してチェックしていたところ、突然電源平滑用のC2の電解コンデンサー1000μFが派手に電解液を吹いて破裂してしまいました。至近距離に顔を近づけていたのですが、工場勤務の習性でちゃんと保護メガネを掛けてましたので電解液が目に入るとかの事故は防げました。
電解コンデンサーを手持ちの同容量の物に換えて様子を見ましたが、すぐに電解コンデンサーが熱くなってきたので停止しました。
電解コンデンサーの極性は間違っていませんし、電源は定格一杯ではありますが無線機用の安定化電源から取った+12Vですので保証外の使い方ではありません。前段のカレントミラーを構成してるトランジスタか何かの部品の故障か、あるいは何らかの原因で電源部が発振したか…。カレントミラーの片側だけなので部品の故障が有力ではありますが…。
このまま使い続ける訳にはいかないけど基板自体はもったいないし、おそらくヘッドホンアンプ部自体にはダメージは受けてないだろうと思い、電源部を撤去して外付けの±6Vの正負電源を作ってそれを使おうと思いました。で、回路図を引いて製作。(クリックで拡大します)。簡単な電源部ですけど。
部品を集めてさくっと製作(上の写真は実際に使った物と違うトランスの箱が写ってますがこれは間違いです)。
動作テストしてみたところ、まだノイズが出るので調べたら、どうもオペアンプが道連れになって逝っていたようです。とりあえず手持ちのMUSES8820に差し替えて再度テストしたところ、非常にクリアな音が出ました。アンプ部そのものの回路にはダメージが無かったようです。
大がかりになってしまいましたのでケースを手配して入れることにしました。選んだケースは昔からあるリードのPSA-2です。
W130×H60×D110のケースですが、72mm×47mmの基板2枚にトランス、ACインレット、ヒューズホルダー等を付けると結構キツキツでした。ともかく無事に収まって何より。
昔からあるケースなので仕上がりが昭和臭満載ですが非常に使いやすく出来たと思います。(ヘッドホン端子の穴開けの時にドリル刃が滑ってちょっとパネルにキズが入ったのが心残り(笑)。
ちょっと電源部のトラブルはありましたが、このアンプキットの素性は価格を考えるととても良い物です。低インピーダンスのヘッドホンでも結構余裕で駆動します。私はやりませんでしたが、ダイヤモンドバッファ部分のトランジスタを低ノイズ品に換えるとかなり効果があるようなので組み立ての際に用意して付け替えるのも良いと思います。いずれにしてもメーカー製の安物を買うよりはよっぽど価値のあるものだと思いました。組み立てが苦にならない人にはオススメ致します。